第7節 ヤル気だけではダメ?

 「成功するには、ヤル気次第です。」と、よく開業の本に書いてある。
 開業をめざす人でヤル気のない人などはいない。みんなヤル気満々(少なからず不安ももって)で開業する。では、ヤル気があっても成功する人としない人の差はいったい何か?
 三年間仕事がなくても食っていけるだけの生活費を準備して開業するというのは、もっとも失敗しやすい例だが、一番大きな理由はその人の心の中にある。
 失敗しやすいのは心の適応力の小さい人である。能力があるかどうかということよりも、むしろ新しい環境や見知らぬ人の中へパッとすばやくとけ込んでいく心の柔軟性である。まじめすぎる人、融通のきかない人、頑固な人、応用問題に弱い人は、なかなか難しい。本人の能力も必要であるが、なにも人並みすぐれた特殊な能力を要求されているわけではない。常に物事を客観的に見ることができるか、自分自身を客観的に見ることのできるかということであろう。
 加えて、独立を決めた最大の理由が行政書士への信頼感でなければならない。本当は行政書士なんかになりたくなかった。別の資格をめざしていたのだけれども行政書士しか受からなかった。「行政書士でも‥」「行政書士しか‥」のデモシカ行政書士は成功しない。
 そういう人はすぐ泣き言を言う。エクスキューズ(excuse)を言う。
 行政書士は仕事がない。簡単な書類だからみんな自分でやる。組合や他の団体がやっている。大きな行政書士事務所がみんなやって、自分のところにまで回ってこない。などなど。
 行政書士の業務は、ゼロサム・ゲーム(zero-sum game)ではない。行政書士の仕事のパイ(pie)が限定されていて、それを行政書士同士がとりっこしているのではない。
 出不精、筆無精を決め込み、動かない。工夫もない。こういう人は早晩行き詰まる。淘汰されていく運命にある。
 「賭ける」ということをしたことがあるだろうか?
 「賭ける」というのは、馬が走る、人が走ることに「賭ける」のではない。自分自身に賭けるのである。自分自身の可能性に賭けるのである。こちらの方がよほどおもしろい。他人がやるのではない、自分自身がやるのである。これほど信じられることはない。
 ハガキの三百枚も出してみる。依頼があるかもしれない。今すぐの依頼でなくても三ヶ月後、半年後にあるかもしれない。そんなのは低い確率と言うだろうか、そうは言うがこれよりももっと低い確率をあたかも高い確率のように思って何度もムダをしてきたではないか。それに比べればこれほど確率の高いものはない。当てにならないギャンブルをするのではなく効果のあるギャンブルをする。そして、幸運の女神が微笑むのを待とう。
 独立するからには当然、成功したい。そのためにはヤル気だけではダメで、そのヤル気を仕事の能力にかえていかなければならない。具体的なツール(tool)にかえていかなければならないのである。