第5節 よろず屋になってはならない

 行政書士業務の範囲は広い。そこで何を主たる業務とするのかわからないし、開業当初は何でもやろう、よろず屋のごとく依頼されたことは何事もひととおりやってみよう、ということらしいが、「その意気込みや、よし!」として、実際はあまりウマイやり方とはいえない。
 業務(field)を絞らない、顧客(target)を絞らないということは、いいかえれば営業をしない、広告宣伝をしないということでもある。いきおい事務所に客が来てくれるのを待ちはじめる。なんら広告も宣伝もせずに電話がくるのを待つ、街の弁護士ならぬ、待ちの行政書士を決め込む。これがダメなのだ!
 官公署のそばや、街角の一角に事務所を設け、そこに人が来てくれる、依頼されたことは何でもやる、不特定多数の個人を相手にする、こういう発想はなくすことである。
 事務所への飛び込み客を主たる顧客とした事務所経営はしない。たとえば運転免許証申請のようなやり方はしない、ということである。なぜならば、飛び込み客の依頼する業務は、いわゆる「考案を要しない」書類の作成であり単価が安い。単価が安くてもかまわないが、その場合はロット(lot)の数がまとまらなければ事務所経営としてはやっていけない。
 単価が高いといっても公益法人設立などレア(rare)な業務もやらない方が賢明である。「社団法人などグレードが高い業務を行いました。」と言うが、グレード( grade)が高いとはどういうモノか?年に一度しか手がけない業務を自慢したところでしょうがない。手がけた業務がノウハウ(know-how)となり、それが、すぐにまた同じ業務に活かせるのでなければ意味がない。
 開業当初の行政書士に唯一足りないものがあるとしたら、それは場数である。一日も早く色々な場数を踏んでほしいが、その場数は次に活かされる場数でなくてはならない。いつもいつも初めての仕事、これは勉強になるから、といっていたのでは身に付いて活かされない。
 ではどうするか?
 法人需要に応えることである。企業の中にある反復継続する仕事を選び、単価の高い専門を決める。なかでも中小企業におけるニーズを考えそれに応えるように事務所の体制を整えていくことである。
 たとえば建設業者なら建設業者と的を絞る。許認可手続きだけで終わるのではない。行政書士で、かつ中小から中堅までの建設業に詳しい行政書士といわれるようになることである。