第4節 兼業を禁ずる

 行政書士を開業したばかりにもかかわらず、他の仕事も同時に始める人がいる。不動産業、損害保険代理店、パソコンソフトの販売代理店、学習塾‥‥。行政書士だけでは食えない、行政書士は兼業の資格、副業で事務所家賃ぐらいになれば、ということだろうが、行政書士は一切の兼業を禁じる。タバコ屋との兼業などはもってのほかである。
 事務所の周り、近所の人びとに「私は、行政書士です。行政書士は、これこれ、こういうことをするのです」と売っていかなければならない。それにもかかわらず、なにゆえ余計な業務をやって、人びとに思い違いをさせるようなことをするのか。
 行政書士とは何か、人びとのために行政書士は何をして役に立てるのか、毎朝晩プレゼン(presentation)していかねばならないのである。
 社会保険労務士など他の資格と兼ねるのも兼業である。これも禁じる。なぜか?
人びとは「行政書士で不動産屋」「行政書士で保険代理店」「行政書士で社会保険労務士」とは思わない。「行政書士」が何かわからないのにプラスして理解のしようがない。この人はあれもこれもやっているから便利な人だとは思わない。人はわかる方、理解できる方をとる。「不動産屋」「保険代理店」「社会保険労務士」だけである。
 ゆえに、開業当初は、兼業を一切禁ずる。行政書士で仕事する。行政書士で信頼を得た。その後ならば何を兼ねてもいい。何を売ってもいい。あなたが売る商品は、何でも買ってくれる。後から売るものはともかく、今、売らなければならないのは何なのか。
 それを、行政書士を売りもせずに、売ることもできずして、他の商品を売るな。それならば行政書士という隠れ蓑など着ずに、不動産屋をやりなさい。保険屋をやりなさい。人びとにはその方がよほどわかりやすい。
 すでに相手に行政書士としてのあなた自身を売り込んだのならば、あとは何を兼業しようとかまわない。すでに行政書士を売っているのであるから、これからは、不動産だろうが、損害保険だろうが、あなたがもっていくものはすべて買ってくれる。
 会社に勤務しながら、行政書士会に入会するのも兼業である。何がメリットなのか。毎月会費を払って行政書士会の会報を送ってもらってもしょうがない。会報が欲しければ、実費を払って会報だけ送ってもらいなさい。
 断っておくがすべての兼業を禁じているのではない。継続かつ表現のもの(継続する性質をもち外から見てハッキリわかるもの。民法二八三条参照)に限って禁ずるのである。
 開業したてで行政書士の収入だけでは不安だという人には、たとえば、日曜日に引越しの運送業の手伝いをする、夜にガードマンやコンビニエンスストアーでアルバイトをするなど、このような兼業ならば大いに奨励する。
 行政書士を売り込むにあたって、人びとに思い違いされないように、商品はわかりやすく、シンプル(simplicity)でなければならないということである。