◆事務所設計マニュアル

 行政書士は、その業務を行なうための事務所を設けなければならない(行政書士法8条@)と規定されているが、どのような事務所がいいのだろうか?
 交通至便で環境良好なオフィス街か? 官公署のそばにあって大きな看板を掲げなければならないか? 近代的なビルの一角に位置していることが必要か?
 顧客に事務所を訪問してもらう。官公署に書類を提出しに行く。官公署のそばで飛び込み客を待つ。事務所のロケーション・物理的な条件が事務所経営に有利であったり、客の訪問を受けた際に、外見の立派さで信頼感を得たりすることがまったくないわけではない。行政書士は無形のサービスを提供する。商品の販売のように目に見えるものを売るのではないから、事務所が立派だという演出もある程度は必要かもしれない。
 しかし、ハッキリいって、客は来ない。客がないという意味ではナイ。「官公署のそばに事務所を構え、客が来てくれる事務所」という発想はやめるということだ。ではどうするのか?
 そう、「こちらから顧客のところへ行く事務所」である。
 「顧客のところへ行く」「官公署に行く」「書類を蒐集する」のであるから、行政書士は事務所を留守にすることが多く、顧客がめったに訪れない事務所が立派である必要がない。開業資金があり余るならばともかく、立派な事務所にこだわらなくてもよいということである。
 客から、「立派な事務所ですね」と言われたとしても、だから「あなたに依頼しましょう」とはいってくれないだろう。資金は事務所よりも営業、広告宣伝にかけたい。開業したてのころは顧客が事務所へわざわざ訪問してくれることよりもこちらから訪問することのほうが多い。お客さんにに来てもらおうなんて十年早い(?)。
 事務所は自宅で充分である。なるべく資金をかけずに事務所をもとうとするならば自宅の1室を事務所にする。自宅兼用事務所である。自宅を事務所にする場合は、事務所部分と居住部分が完全に分離され、業務の秘密保持と従事に差し障りがないようにしなければならない。たとえば独立した6畳位のスペースは必要である。リビングなどと併用は望ましくない。
 自宅で十分であるが、事務所所在地の住居表示はやはり人口が多い都市がいい。それもできればベッドタウンよりは昼間人口の多い地域、中小企業や商店のある都市がいい。行政書士は人を顧客として成り立つ。役所のそばである必要はないが、人が少ないところでは仕事にならない。県庁所在地や主要な都市が有利であることはいうまでもない。
 行政書士を開業するときに、「事務所はどこに設ければいいですか」「事務所を設けなければならない」と何をおいてもまず事務所のことをいい、それがすべてのような人もいる。「事務所などはどこでもいい、自宅で充分だ」というとけげんそうな顔をする。事務所をもたなければ仕事が始まらないような、事務所さえできれば、もうそれがすべてで、仕事はそこへやってくるような気分になる。
開業当初から立派な事務所を構えて失敗した行政書士を見る。なぜ、そんなに立派な事務所が必要なのだろうか。仕事は事務所がやるのではない。立派な事務所だから仕事がくるのではない。官公署のそばだから仕事がくるのではない。名刺に記載できる場所があればいい。