◆その他の法令の対策

 その他の法令とは、地方自治法、行政手続法、行政不服審査法、戸籍法、住民基本台帳法、労働法、商法、税法に法学概論をいう。

@地方自治法
 日本国憲法92条に「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。」とあり、この法律が地方自治法である。
 地方自治法は、条文数も多くその出題も広範囲にわたっている。また、平成5年度の地縁による団体(260条の2)の問題のように、この条文を読んだことのある者さえ少なく、たとえ読んでいたとしても条文の知識だけでは正解できないような難問も少なくない。
 そうかといって多くの勉強時間はかけられない科目でもある。
 そこで、地方自治法の勉強は、制約された時間の中で効率的な学習効果を上げるために、学習対象を絞る必要がある。まず、行政書士試験用のテキストをひととおり読む。
 出題傾向から過去の出題問題を研究するとともにその条文に目を通す。さらに、その条文の前後の条文からひとつづつ読み 理解していくことである。条例、長、地方公共団体の機関、普通地方公共団体の議会、直接請求の要件と相手方など、それぞれの条文ならびにその周辺の条文から押さえていくことである。
 地方自治法からは2問出題されるが、もし難しい問題が出題されたとしても他の受験生もできていないはずである。そのときは1問だけでも獲得するようにしたい。
A行政手続法
  行政手続法は、処分、行政指導および届出に関する手続きに関し、共通する事項を定めることによって、行政運営における公正の確保と透明性の向上を図り、もって国民の権利利益の保護に資することを目的(行政手続法1条 項)に制定され、平成6年10月1日より施行された。
 定義(2条)、審査基準(5条)、行政指導(35条)などの条文および前後の条文を確認して、次にその条文に関連する条文を読み理解しておく必要がある。
a 許認可等の申請に対する処分が迅速・透明な処理を確保する。
 @申請が到達したときは遅滞なく審査を開始する(審査開始義務・7条)。
 A申請が許認可等の要件に適合しているかを判断するための具体的基準を設定し、公にしておく(審査基準・5条)。
 B申請から処分までに要する標準的な期間を定めるよう努め、公にしておく(標準処理期間・6条)。
 C申請を拒否する場合には、同時にその理由も示す(理由提示・8条)。
b 不利益処分(営業許可の取消、営業停止等)にあたり、公正・透明な手続を確保する。
 @どういう場合にどの程度の不利益処分を行うかについての基準を設定し、公にしておくよう努める(処分基準・12条)。
 A不利益処分を行う前に、次のいずれかの意見陳述の機会を付与しなければならない(13条)。
 a許認可等の取消しや資格・地位を剥奪する不利益処分を行う場合には、口頭により主張、立証する機会を与える(聴聞手続・15条以下)。
 b一定期間の営業停止など、上記a以外の不利益処分を行う場合には弁明書を提出する機会を与える(弁明手続・29条以下)。
 B不利益処分を行う場合には、同時にその理由も示す(理由提示・14条)。
c 行政指導は、明確性・透明性を確保する。
 @相手方の任意の協力が前提であり、従わないことを理由とした不利益な取扱い(別の場面で許認可を行う場合に意図的に差別扱いをするなど)を禁止する(一般原則・32条)。
 A行政指導の趣旨、内容、責任者を明確にし、相手方の求めに応じて書面を交付すること(明確化原則・35条)。
d 届出について公正・透明な処理を確保する。
 @形式的要件に適合する届出が到達したときは、手続上の義務が完了するものとする(届出・37条)。
B行政不服審査法
 行政不服審査法は、行政法を学び行政救済を学ぶときに、行政事件訴訟法と合わせて勉強してほしい。行政主体(国、公共団体など)は、行政客体(人、法人)に行政処分を行なう。もし、その処分に不服がある場合にどうしたらいいのだろうか。そこに行政救済の問題がある。
 行政不服審査法は、行政庁の違法または不当な処分その他公権力の行使に当たる行為に関し、国民に対して広く行政庁に対する不服申立ての道を開くことによって、簡易迅速な手続きによる国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保することを目的(行政不服審査法1条)に制定された。
 出題傾向を見る限りにおいては非常に多くの項目にわたっているが、条文の知識があれば正解できる内容である。条文の数も少ないので、特定の部分に集中することなく全部の範囲に目を通しておくことができる。
 行政書士試験用のテキストを一度読み、合わせて条文をそのつど一つひとつ確認しておく。
 また、条文の数字についても、あやふやな知識でなく確実にマスターしておかなければならない。
 平成6年度の問題では、審査請求(14条)は「30日以内」にしなけばならないのか「60日以内」にしなければならないのか。
 審査請求をすることができなくなるのは「1年」を経過したときか「2年」を経過したときなのか。異議申立てをしたのに決定がないときに、審査請求ができるのは「3ヵ月」を経過したときなのか「6ヵ月」を経過したときなのか。裁決書の謄本の送付があったものとみなされるのは「2週間」を経過したときなのか「3週間」を経過したときなのかと出題された。
 日数の起算日は「処分があったことを知った日の翌日」(行政不服審査法14条)からなのか、「処分があったことを知った日」(行政事件訴訟法14条)からなのか。条文とその数字も含めてていねいな記憶が要求される科目である。
C戸籍法
 ある人が、いかなる身分関係にあるかを明らかにすることは、当事者の必要のみならず、交渉する第三者にとっても重要な意味をもつ。そこで、この身分関係を記載し、公示、公証する制度が、戸籍制度であり、これについて定めたものが戸籍法である。
 戸籍法は、過去6年間の傾向を見るに、戸籍の届出を中心に戸籍簿や戸籍の記載などの分野が出題されている。戸籍についての基本的な事項を定めた条文を理解していれば正解できる問題である。そこで、行政書士試験用のテキストを読み込むとともに、条文を通読することが必要である。さらに過去の出題傾向から条文のどこがポイントなのか把握しておくこと。
 戸籍に関する事務は、市町村長が管掌する(1条)が、法務局または地方法務局の長が監督する(3条)。戸籍は、市町村の区域内に本籍を定める一の夫婦およびこれと氏を同じくする子ごとに編製される(6条)。
 戸籍の記載は、届出、報告、申請、請求若しくは嘱託、証書もしくは航海日誌の謄本または裁判によって行われる(15条)。
 戸籍の届出には、届出地、届出の方法、届出期間などが定められている。出生届、認知届、養子縁組届、婚姻届、離婚届、死亡届などについてそれぞれ理解しておく。不適法な記載などを発見した場合には、家庭裁判所の許可を得て戸籍の訂正をすることができる(113条)。また、市町村長の処分を不服とする者は家庭裁判所に不服の申立てをすることもできる(118条)。
D住民基本台帳法
 住民基本台帳法は、個人の居住関係および地位を公証する必要から生まれた法律である。住民基本台帳法は条文からの出題であり、条文さえ記憶していれば正解できるレベルの問題である。過去6年間の出題傾向を見てもわかるとおり、主要な項目はすでに出題されているので、過去の問題を見て、その条文を理解しておけばよい。
 住民基本台帳は、市町村に備え付けられ(5条)、記載事項が定められている(7条)。市町村長は、その市町村の区域内に本籍を有する者について、その戸籍を単位として、戸籍の附票を作成しなければならない(16条)。
 届出の種類は、転入届(22条)、転居届(23条)、転出届(24条)、世帯変更届(25条)がある。その届出を行う者(26条)、届出の方法(27条)が定められている。市町村長がした処分に不服がある者は、都道府県知事に審査請求をすることができるし、異議の申立てをすることもできる(31条の2)が、処分の取消しの訴え(行政事件訴訟)は、審査請求の裁決を経た後でなければ提起することができない(審査請求前置)(32条)。
E労働法
 通常、労働法といわれる分野の範囲は広いのだが、行政書士試験の場合、過去6年間の出題傾向を見ると、平成3年から平成6年までは労働基準法からの出題であったが、平成7年、8年度は労働組合法から出題されている。労働基準法も労働組合法も勉強しなければならないのであるが、勉強時間の少ない人は、試験傾向にそった行政書士試験用のテキストでまとめていくことが必要である。
 労働基準法の第1章総則からは、平成4年度、6年度に出題され、第2章の労働契約からは隔年ごとに出題されている。しかし、今まで出題されなかった第4章労働時間、休憩、休日および年次有給休暇から平成6年度に出題されたように、各章まんべんなく出題され るので、全条文に目を通しておかなければならない。とくに労働者の中でも保護されなければならない年少者(第6章)、女子(第 6章の2)については受験生の知識を問うておきたい内容である。
 第9章の就業規則については、会社に勤務している人ならば自社に就業規則があるだろうから具体的なものを見ておくことである。さらに、労働問題についての新聞記事などを読んでおくことも、法を身近なものにし理解を深めるために必要なことである。
 労働組合法も、第1章の総則から第5章の罰則まで33条すべての 条文に目を通さなければならない。労働組合(2条)、労働者(3条)の定義を理解する。また、不当労働行為(7条)、労働協約(第3章)、労働委員会(第4章)とは何か。いずれも各条文をよく読み理解しておけば正解できるレベルの問題である。過去問題で充分答案練習しておくことである。
F商法
 商法は、条文数も多く、ときどき難解な問題も出題されるが、そうした年度は他の受験生もあまり正解できないと思われる。そうではなく、基本的な問題が出題されたときに取りこぼしがないように基礎的な知識は学んでおきたい。
 過去6年間の出題傾向を見ると、平成5年度までは会社法の問題が出題されてきたが、平成6年度には、商法総則、商行為の問題が出題された。第4章の株式会社を中心に勉強していた受験生にとっては難しいと感じたはずである。また、平成8年度には有限会社についての問題までも出題された。
 このように勉強していない範囲が出題されたときはしょうがないとしても、やはり株式と株主総会、株式会社の取締役、代表取締役、取締役会について条文をよく読み理解しておくこと。将来、行政書士になった後にも役に立つのである。それと株式会社と有限会社のそれぞれの特徴と違いも整理しておいてほしい。
 また、新聞の経済面、社会面に商法の知識をふくらませるのに役立つ記事が掲載されていることがある。注意して目を通して考える時間もつくってほしい。ただ、例年1問しか出題されず、非常に奥が深い科目でもあり、あまり時間をかけることができない受験生は、ほどほどに(?)しておいた方が賢明ではある。
G税法
 税法については、税法そのものよりは「税に関する常識」が問われている。過去6年間の出題傾向を見ていただいてわかるとおり、とくに税の分類がよく出題されている。
 国税(国に納める税金)なのか地方税(地方自治体に納める税金)なのか。地方税であるとして道府県税(都税)なのか、市町村税(特別区税)なのか。所得税や住民税などの直接税(納税義務者と税負担者が同一人である税金)なのか、消費税や酒税などの間接税(納税義務者と税負担者が異なる税金)なのか。所得税や住民税などの普通税(一般的な財源にあてられる税金)なのか、自動車取得税や都市計画税などの目的税(特定の目的にのみあてられる税金)なのか。
 各税目を一覧表にまとめ整理しておくこと。合わせて、最近話題になっている税についての知識、いわば「税に関する常識」についても新聞の記事などから収得しておくことが必要である。
H法学概論 
 法学概論は本来取り扱う対象が広い学問であるが、行政書士試験の場合その出題傾向はかなり限定されている。そこで、行政書士試験用のテキストを用い、勉強する範囲を絞る必要がある。
 過去6年間の出題をみると、法の解釈、法令用語、法の効力などが出題されている。
 法の解釈では、文理解釈、もちろん解釈、拡張解釈、縮小解釈、類推解釈、反対解釈の意義とそれぞれ具体例を理解しておく。法令用語では、「みなす」と「推定する」、「侵す」と「犯す」の違い、「AもしくはBまたはC」「AおよびBならびにC」の意味など、法律を学ぶに基本的な事項は把握しておかなければならない。
 法学概論の勉強というよりは、憲法、民法、行政法などを学ぶに必須の知識でもある。法律を初めて学ぶ人は、まず、法律概論からひもといてほしい。
 勉強中にわからない言葉が出てきたならばそのままにしないで、法律用語辞典を開いて、そこで使われている言葉の意味を確かめるようにすること。