◆民法の対策

 民法からの出題は、非常に広い範囲にわたっている。過去6年間に36問出題されているが、出題分野は多くの項目にわたる。また2年続いて同じ分野から出題されず、重複することがきわめて少ない。いわば全分野にわたって広く条文を読んでおかなければならないということである。
 民法は1044条と膨大な量の条文があるが、行政書士試験の場合、学説の内容や学説の対立点など高度で細かな事項は出題されない。基本的な理解を問うものがほとんどで、やはり基礎的な試験によく出る重要な条文は理解し記憶しておくことである。
 行政書士試験の傾向を知り条文を中心にていねいに勉強してきたほうが得点できるという、素直ないい問題が多く出題されている。
 そこで、いたずらに難解なテキストや問題集を使ったり、枝葉末節な知識を身につけることなく、自分が知らないことは他の受験生も知らないはずだくらいに考えて、気にせず自信をもって過去の出題傾向にのっとりよくでる条文を記憶しておくことである。勉強に時間がかかる科目であるから早い時期からスタートして充分時間をかけてほしい。
 財産を所有し取引をするなどの関係を規定する財産法(第1編総則、第2編物権、第3編債権)の分野よりも、家族間で財産を移転するなどの関係を規定する家族法(第4編親族、第5編相続)の分野のほうがわかりやすいと思ったら、総則から勉強する前に、家族法から先に勉強を始めて民法の条文に慣れてから第1編の総則へフィードバック (feedback) してもよい。総則を理解しなければ家族法がわからないというものでもない。
 近代社会は所有権を基本に成立している。民法もその80%は所有権についての規定である。民法を学ぶには、財産の所有たとえば「土地を売る」「土地を買う」などと具体的に勉強していくことが民法のひとつの勉強の仕方であろう。
第1編 総則
 所有権を扱う基本的な規定であり、ここで用語の意味を覚えておかなければ財産法の分野が理解できないことになる。すべての項目について理解が必要である。人は、誰とでも自由に契約を結び(契約自由の原則)、権利を得、義務を負う。しかし、契約は自由だといっても、未成年者など社会的弱者は保護されなければならない。契約を単独で完全に行なうことができる能力を行為能力というが、では、行為無能力者とは何か。
 本当は売る気もないのに「土地を売る」と意思表示するのを、意思の欠缺、瑕疵ある意思表示という。心裡留保、虚偽表示、錯誤とは何か。また、詐欺や脅迫によってしてしまった意思表示は、後に取り消すことができるのだろうか。
 代理とは、代理人が本人に代わって意思表示を行ない、その法律効果が直接本人について生ずることをいうが、では、表見代理とは何か、無権代理とは何か。
 「そんなこと法律上無効だ」「購入を申し込んだけど取り消すよ」というが、法律上、無効と取消しはどう違うのか。
 「3日間借りる」「1ヵ月後に返す」など期間を計算する場合、いつから計算するのだろうか。初日を計算するのか、しないのか。
 時効とは、ある事実状態が一定期間継続した場合に、それが本当の権利関係に合っているかどうか、といことは問題にしないで、その事実状態をそのまま権利関係として認めようという制度をいうが、では、取得時効と消滅時効、時効の援用、時効の中断とは何か。
第2編 物権
 所有権の構造そのものを規定している。物権とは、一定の物を直接に支配して利益を受ける排他的な権利をいう。
 甲は、乙から土地を購入したが、甲が登記をする前に、乙は丙にも売った(二重売買)。登記の有無により甲の所有権はどうなるのだろうか。甲が購入した土地は、丁が、権利(本権)がないにもかかわらず、自分のためにする意思をもって住んで(占有して)いる。このように、ある人が、自分のためにする意思をもって、物を所持することによっても物権が成立する。これを占有権という。甲は、銀行から借金をしてローンで購入したので、甲の土地には抵当権が設定されている。
 以上の、所有権、占有、占有権、担保物権の中でもとくに抵当権を中心に、各物権の相違点を整理して理解しておく。物権の変動について、物権公示の原則、不動産に関しては登記(177条)、動産に関しては引渡し(178条)を押さえておくこと。
第3編 債権
 所有権を移転させていく基準を規定している。債権とは、ある人(債権者)が他の人(債務者)に対して、特定の行為(給付)を請求しうる権利をいう。
 物権は、家を所有してそこに住む、土地を抵当にとって担保にする、など、物を支配する関係であるが、債権は、買物をして品物を渡してもらう、人を雇い働いてもらう、など、他人に何か行為をしてもらう関係である。
 過去6年間の傾向を見ると、債権総論からは、債権者代位権、連帯債務と保証債務、債権の消滅原因として弁済・相殺が出題され、各論からは、契約の成立と解除、売買、賃貸借、不当利得、不法行為などが出題されている。過去に出題された問題をやってみるとともにその出題の形式も知っておくこと。
第4編 親族
 親族では、第5編相続の前提立法としての規定をおいている。血族関係および婚姻関係によって結びつけられた人の集団を親族という。家族は社会の単位であり家族の中心は夫婦である。婚姻関係の安定なしには社会の安定は保たれない。
 過去の出題から押さえておいていただきたいのは、婚姻と離婚、嫡出子と非嫡出子と認知、普通養子と特別養子、また戸籍法、住民基本台帳法とも関連づけて学べば学習効果が高まる。
第5編 相続
 相続には、土地所有権の相続についての規定をおいている。
 相続とは、人(被相続人)の死亡により、その人のもっていた財産を相続人に承継されることをいう。ここでは、相続が発生したときに、誰に、どれだけ、財産を相続させるかという、相続分の計算ができるようにしておかなければならない。
 あわせて、過去の出題傾向から、遺言についての知識も必要である。