◆行政書士試験

 行政書士試験は、男女の別、年齢、職業、経験に関係なく誰でも受験することができる。受験資格は高等学校を卒業した者(行政書士法3条1項)だが、そうでない場合でも受験資格が与えられる(同条3項)こともあるので、各都道府県庁の行政書士試験の担当課に問い合わせていただきたい。
 試験は、自治大臣が「行政書士の業務に関し必要な知識及び能力について行う」となっているが、その施行の事務は、都道府県知事に委任されているので各都道府県によって行なわれている(同法4条)。
 試験日は、年1回、10月の第4日曜日に実施されているが、施行の日時、受験の場所、受験手続、受験料などの詳細は、8月になったら各都道府県庁に問い合わせて案内書の請求をしていただきたい。

試験科目は、次の@〜Bの3つの部門から出題される。
@行政書士の業務に必要な法令
 行政書士は、法律家でなければならない。法を学ぶことになる。
 国家の根本法、基礎法である最高法規日本国憲法を知らなければならない。人びとの生活関係を規律する法と財産や身分にかかわる民法、行政の組織と作用および救済に関する行政法、将来行政書士になるのであるから、行政書士法と行政書士法施行規則も学ぶ。
 法律を初めて学ぶ人は法学概論からひもといてほしい。その他の法律として、地方自治法、行政手続法、行政不服審査法、商法、労働法、戸籍法、住民基本台帳法、税法(についての知識)の以上が業務法令の科目である。
A一般教養科目
  漢字の読み書きや語の使い方、文章の理解力や文学史の知識を問う人文分野、政治や経済、歴史、地理、時事問題などの知識を問う社会分野。そして、数学、理科などの自然分野の問題も出題される。この年齢になってまた社会や数学かと思う人もいるかも しれないが、行政書士は法律の専門家であると同時に教養人でなければならない。専門バカではない広い視野が求められる。
 ある試験に10年、20年かける人がいる。なんのための人生か。この試験を当初目指した目的は別にあったはずである。それが受験することだけが目的になる(本人はそうは思っていないだろうが)。この試験の改革のひとつに若年者からの合格者を増やすための受験回数の制限がいわれている。これには反対意見が多いが、長年受験し続けることの弊害を目の当たりにして、その必要を感じる。この試験にも一般教養を科目にしたらどうか。
 どんな試験であろうとそれが勉強ならば(強いて勉めるものならば)短期必勝でなければならないし、それは苦しみの中にだけあるのではなく、本来喜びの中にもあるのでなければならないのである。
 そんなわけで、行政書士になりたい人にはもう一度社会や数学の試験が行なわれる。
  もっとも、これらの知識に精通したところでその人が教養人であるかどうかはもちろん疑いのあるところである。しかし、就職試験にしろ公務員試験にしろ同様な試験が行なわれている。これらの試験をクリアした者だけが、たとえば一流といわれる企業に就職したり上級公務員になっているのだとすれば、いわんや、この程度の問題をできずに行政書士にはなるなということであろう。
 業務に必要な法令科目と一般教養科目は、5つの選択肢を与えられ、その中からひとつの正解を求める択一試験によって行なわれる。
 「次の記述のうち、正しいものはどれか」「次の記述のうち、誤っているものはどれか」という形式であり、「〜について論じなさい」という論述での出題はない。この試験形式ならば、短期集中の勉強で合格が勝ち取れるというものである。高校時代にあまり勉強のしなかった人(よく勉強した人も……)は、もう一度、高校の教科書をひもといてみようではないか。
B論述試験
 物ごとを論述する能力、筋道を立ててモノの道理を相手にわかりやすく話せる(論述する)能力は、ここで試される。論述試験は、かつては「作文」という形で出題されたが、昭和62年度以降は「論述」の形式をとるようになった。与えられた課題について、@課題の背景および問題点、A課題に対するあなたの考え方を、 60分で800字以内で論述することを要求される。
 論述と作文は、どうちがうのだろうか。作文は、自分の趣味や特技について思いついたままを主観的に書きつづることであるが、論述は、ある事物について理論的な筋道を立てて主張や意見を述べることをいう。論述には主張があり、論旨が通っていなければならない。作文は、思いつくままに、自由に書いていけばいいが、論述は課題が与えられたら、まず、論旨をどう展開するか、と考える必要がある。論旨が決定的な要素となる。与えられたテーマに対して、「私はこう考える。それはこんな理由からである。」と、筋道をたどって論じていくのが論述である。書き手の主張を読み手に直接訴えるものであるから、論旨の展開が決め手となる。
 仮に1+1が2でない、3だというときには、3であるという主張を、読み手になるほどと納得させねばならない。
 行政書士試験に、なぜ論述試験があるのだろうか。
 行政書士は、試験に合格さえすれば、特に実務の知識や経験がなくても開業することができる。すなわち、人々から依頼を受けて「官公署に提出する書類」や「権利義務又は事実証明に関する関する書類」を作成して報酬をもらうことができる(行政書士法1の2条)のである。
 人々から依頼されるためには信頼されるだけの人柄や教養がなくてはならない。昔から「文は人なり」といわれる。これは、いいかえれば「文章を見れば人となりがわかる」ということである。
 業務法令科目で専門家としての法律の知識が問われ、一般教養科目で通常人としての教養が問われる。論述試験により、行政書士となるにふさわしい人柄であるかどうか。人々から信頼されて、依頼される人物であるかどうかが問われるのである。
 さらに、「官公署に提出する書類」や「権利義務又は事実証明に関する関する書類」を作成するにあたっては、依頼者の意思を充分に把握しなければならない。加えて、依頼の内容を要領よくまとめて記述する文章作成能力が問われるのである。
 試験は、午後1時から始まり午後3時までの120分で、行政書士の業務に必要な法令科目30問と一般教養科目20問の合計50問を解答することになる。択一試験のあと45分間休憩した後に、午後3時45分から午後4時45分までの60分が論述試験の時間になる(都道府県によって試験開始および休憩の時間は多少相異する)。
 資格試験は合格試験である。満点をとる必要はない。ただし業務法令科目30問中20問、一般教養科目20問中10問は得点しなければならず、いわゆる足切り点が設けられている。それぞれが足切り点に達している者だけが論述も採点してもらうことができる。論述にも足切り点があり60%以上の得点が必要である。
 何問以上正解したならば合格という合格ラインは、実はその年度の出題内容の難易によって上下するものと思われる。合格率とのかね合いもあるが、全般的に難しい年度だったならば合格ラインは下がるだろうし、平成6年度のように合格率も急降下する。
 そこで業務法令は7割以上、一般教養、論述はそれぞれ6割以上の獲得を目標としたい。
 もとより、こうした足切り点、配点、採点および合格基準が公表されているのではない。
 実は、行政書士試験は、受験者本人にのみ試験の得点を開示されることがある。各都道府県の個人情報保護条例の規定により、受験者本人が希望すれば試験の合否に関わらず、自己の得点を開示してもらうことができる。そこから、多くの受験者の合格および不合格の得点情報から、合格ラインの点数をおおよそ類推することができるのである。
 東京都では、A法令科目の得点B一般教養科目の得点C論述科目の得点を行政書士試験結果発表後に、受験者への合否の結果通知に合わせて、得点の告知を希望した受験者あてに郵送してもらうことができる。東京都以外でも各県の情報公開総合窓口、県民サービスセンター、公文書センターなどといったところで受験者本人にのみ得点が開示される。ただし、電話やハガキなどによる開示、本人以外には開示されない。また、満点、配点、合格基準などについては一切公開されていない。