◆行政書士試験超人気の秘密

 注目の国家資格・行政書士といわれる。なぜ、行政書士試験なのだろうか。その人気の秘密はなんであろうか。
@行政書士が有名になったこと
 かつて、それほど有名ではなかった行政書士であるが、受験指導機関などが新聞・雑誌に広告、宣伝することにより、行政書士資格の存在自体が知られるようになった。履歴書に「免許資格」欄がある。記載できるのが自動車運転免許だけというのでは心もとない。資格があるというのは就職に有利になるし、自己の能力を証明する手段でもある。
 まして今日の女子大生に象徴されるような就職難の時代になると、就職に備える大学生は何か資格をとっておこうと、もうひとつ学校に通うダブルスクール化現象をおこす。なに、子どものころから学校と塾に通っていたわけだからそんなのは当たり前で少しも苦にならない。
 法文系の学生は、法律の入門資格ということで行政書士や宅地建物取引主任者を目指す。国家資格の受験学校だけでなく、ビジネススクールや専修学校にも行政書士コースができる。
 また、このごろの学生は景気の好況に左右されない安定した職業ということで公務員を目指す。公務員試験を受験するために、これまた公務員合格受験講座などの学校に通う。公務員試験と行政書士試験の科目に重複するものがある。公務員の教養試験は、行政書士の一般教養科目になるし、専門試験のうちの憲法、民法、行政法はそのまま行政書士の主要試験科目である。公務員試験は 9月から、行政書士試験は10月。試験日からいっても、これは行政書士試験も受けておくべき、となるのは当然で、まるで行き掛けの駄賃のようなものである。
 まして、行政書士試験の一般教養科目の勉強は、就職試験にも直結する。また試験内容、レベルからいっても、現役の学生のうちに受験しておくことが有利なのはいうまでもない。
A昇進、昇給、転職、そして独立に有利な資格であること
 資格があるということは、その人に箔がつくというだけでなく 実利もともなうものである。
 企業戦士といわれた中高年サラリーマンも団塊の世代を中心に人があふれ、昇進、昇給も思いのままにはならない時代である。職場の同僚に差をつけなければならない。社内的には昇進試験もあろうが、プラスして価値のある資格をとっておくことであろう。
 さなきだに現代は終身雇用制度が崩れ、いつまで今の会社にいられるかわからない時代である。企業のリストラクチャリング(事業の再構築)で、希望退職者募集、子会社出向など、人員整理の対象になる。いわゆる事務屋といわれる総務部、経理部などのスタッフがいの一番に対象になる。転職を有利にするのは資格である。いざとなれば、独立開業すればいい。
 そこで、事務系の資格でとりやすい国家資格といえば行政書士になる。さらに、社会保険労務士もとりたい。何しろ今の会社でやっている事務の仕事は、行政書士や社会保険労務士の仕事の分野でもある。社会保険労務士の受験資格は、短大卒業以上の学歴か、行政書士資格があればいいことになっている。
 そこでまず、行政書士をとり、それから社会保険労務士もとる。将来はこのダブルライセンスで独立開業しようと、人生設計をする。ふたつの資格で武装することによって、独立開業にも自信がもてるというものである。
B外国人関係業務が行政書士の業務と知られたこと
 どんな仕事をする資格なのか、今ひとつよく知られていない行政書士も、最近、その業務が人びとに知られるようになった。そのひとつに外国人関係業務がある。
 新聞の社会面に、日本に住む外国人のことが載らない日がないといっていいくらいであるが、外国人の在留に関する手続きが、行政書士の業務であるということが知られるようになった。何をする資格なのかわからないけれど、国家資格だからとりあえずとっておこうという人が、かつては多く見受けられたが、この 1、 2年は、外国人関係業務をやりたいから行政書士を受験するという人が増えた。受験者層が若くなり女性が増大しているのも、実はこの外国人関係の業務をやりたいということもあると思われる。
 このように行政書士になって「○○の業務をやる」と目的意識をもって試験を目指す人が増えている。これが今までのように、本当は○○士を目指していたのだけれども、試験に受からなかったから行政書士になった、などというデモ、シカ行政書士とは大いに違うところである。
 さらに、行政書士は現代の大きな社会の動きにも対応できるので、これから新規参入しても工夫次第でいくらでも業務の拡大ができるとピンとひらめいた人が、国家資格の中からとくに行政書士を選んでこれを目指すのである。
C高学歴の主婦、OLなど女性が受験するようになったこと
 大学卒業後は働いていても、結婚、出産で退職することの多いのが女性である。子育てがひと段落すれば、もともと才能豊かな女性のこと、家庭に納まっていないで、また社会に出て働きたいと思う。しかし、これといったキャリア(career)がないことにはいい職も見つけられない。そこで、手に職をつけるか、何か資格を目指すことになる。
 そこで見つけたのが宅地建物取引主任者資格である。法律は難しそうだが、学んでみれば、そこはそれ、学生時代は男子学生よりもマジメだったのである。国家資格を目指す勉強もこれまたマジメである。たちまち法律がおもしろくなる。この試験の傾向と対策は、マジメにコツコツと勉強することで女性向き(?)である。で、この程度の試験は難なくこなして、合格してしまう。
 ところが、この資格は不動産関係業務に就職する以外にそうは活かせない資格であることに気づく。そこで、次に何かいい資格はないかということで探したところ、勉強した民法が試験科目にあるということで行政書士資格にゆきつく。
 行政書士の業務に外国人関係業務があることを知ると、日ごろから社会問題や時事問題には関心が高く、外国から日本に来ている人たちの役にも立ちたいと考える。さらに、外国人関係業務で、学生時代から今も学んでいる英語が活かせるのではないかと考えたならば、これはもう将来のキャリアウーマンへの道が拓ける。
 こうして、大学教育を受けた女性たちが行政書士試験を目指すのである。
D定年後の生活設計に役立つこと
 定年まで勤め退職したとして60歳、人生80年としたならばそれから20年もある。その20年をどう生きるかによって、その人の80年の人生が決まるといっても過言ではない。
 そのひとつは、経済的な生活の不安を解消することであろう。年金だけでは心細いから、資格を活かした仕事をして収入を得たい、と考える。
 もうひとつは、精神的な豊かさも求めたい。自己啓発とか生涯教育ということがいわれる。教養だけで学ぶのもいいが、法律や一般教養を学んだ結果、腕試しにチャレンジしてみる資格が行政書士である。生き甲斐にもなり、行政書士にもなれる。
 もともと経済的にそれほど必要性があって目指す職ではないならば、ボランティアで行政書士業務ができるものならばそれはそれでよい。成熟した老齢化社会には必要な人材である。
E行政書士会や行政書士の広告宣伝で有名になったこと
 行政書士会が、毎年10月に「行政書士110番」と称した無料相談会を全国で実施する。これを全国の新聞が記事としてとりあげる。行政書士出入国事務研修会が実施された折にはNHKが取材に訪れ、お昼のテレビニュースで放送される。このように行政書士会のさまざまな活動をテレビ、新聞などのマスメディアを通じてパブリシティ(publicity)を行なっている。
 行政書士個人が、個々に営業活動を行なう。日刊紙や夕刊紙には「会社設立・許認可手続」、建設業界紙には「建設業許可・経営事項審査申請」、日本に住む外国人に向けた新聞、雑誌には「外国人在留許可申請」など広告・宣伝を掲載している。行政書士各自がめいめいに営業を行なうことによって、それぞれその個人が知られるのは当然ながら、それはまた人びとに、「行政書士という職業がある」こと、かつ「行政書士はこのような仕事をする」ということを知らしめている。個人の広告・宣伝であるが、その意義は大きいといわなければならない。
 さらに行政書士会の所管官庁である自治省をはじめ、都道府県庁、市区町村など、各自治体の行政書士に対する協力も大きな影響力をもつ。役所の窓口に出向いた人が、「官公署への書類は行政書士へ」という掲示を見る。これは効果てきめんである。人びとに行政書士を知らしめるばかりでなく「この書類は、行政書士の仕事なのか」と、その業務までも認知してくれるのである。
 行政書士の名前は有名になってきたが、その仕事まではあまり知られていない現在、その業務が世の人びとの知るところとなれば、業務に対する人びとの潜在的ニーズがあるだけに、行政書士の社会的地位が爆発的に高まるものと思われる。かくして、行政書士はますます有名になり、年々受験者が増大することになる。